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億の細道

億り人への道のり―迷い、考え、株式相場を歩む

物価上昇が続く日本、インフレは株価にどう影響するのか

インフレと株価

日本では長い間、物価が上がりにくいデフレが続いてきました。

デフレになると、消費者は「待てばもっと安くなる」と考えて支出を控えやすくなります。企業も商品を値上げできず、売上や利益、賃金が伸びにくくなります。

しかし、2022年頃から、原材料価格の上昇や円安などを背景に物価が上がり始めました。
また、少しずつですが賃上げも広がりつつあります。

2026年7月の消費者物価指数は、総合で前年同月比1.9%上昇しました。
物価上昇は以前より落ち着いていますが、日本はすでに「物価がほとんど上がらない状態」から変化、つまり、デフレからインフレへ移行する局面に入っています。

このようなデフレからインフレへの移行局面では、株価はどのような影響を受けるのでしょうか。

インフレには原因の異なる2つの種類がある

インフレとは、商品やサービスの価格が継続的に上昇する状態です。
ただし、同じ物価上昇でも、原材料費などの上昇によって起きる「供給型インフレ」と、消費の拡大によって起きる「需要型インフレ」では、経済や企業業績への影響が異なります。

供給型インフレ(コストプッシュ・インフレ)

供給型インフレとは、原油や原材料、人件費、輸送費など、企業が商品やサービスを提供するために必要なコストの上昇によって起きるインフレです。
商品不足や物流の混乱によって供給が減り、物価が上がる場合もあります。

日本では、円安による輸入価格の上昇も大きな原因になります。原油や原材料を海外から輸入している企業では、円安が進むほど仕入れコストが増えるからです。

簡単にいえば、商品を作る費用が増えたために価格が上がるインフレです。

企業は増加したコストを吸収しきれなくなると、商品の値上げを行います。ただし、値上げしたからといって企業の利益が増えるとは限りません。
コストが10%増えたのに、販売価格を5%しか引き上げられなければ、残りは企業が負担することになり、利益率は低下します。

供給型インフレでは、家計の負担が増える一方で、企業の利益も圧迫される可能性があります。

需要型インフレ(デマンドプル・インフレ)

需要型インフレとは、景気が良くなり、商品やサービスを買いたい人が増えることで起きるインフレです。
需要が供給を上回ることで物価が上昇するため、「デマンドプル・インフレ」とも呼ばれます。

簡単にいえば、商品がよく売れるために価格が上がるインフレです。

企業の売上や利益が増え、それにともなって賃金も上昇しやすくなります。

※インフレの意味やデフレとの違いについては、用語集「インフレとは?デフレ・スタグフレーションとの違いを解説」で詳しくまとめています。

現在の日本は供給型インフレの影響が強い

現在の日本の物価上昇は、需要型よりも供給型インフレの影響が強いと考えられます。

主な原因としては、次のようなものがあります。

  • 円安による輸入価格の上昇
  • 原油や天然ガスなどのエネルギー価格の上昇
  • 食料品や原材料価格の上昇
  • 物流費や人件費の増加
  • 人手不足によるサービス価格の上昇

需要が急増したから物価が上がったというより、企業が増加したコストを販売価格へ転嫁した結果、物価が押し上げられている面が大きいと考えられます。

2026年7月の全国消費者物価指数は、総合で前年同月比1.9%上昇しました。生鮮食品とエネルギーを除いた指数も1.9%上昇しており、一部の商品だけではなく、幅広い分野で価格が上がっています。総務省統計局「2026年7月分 消費者物価指数」

人手不足を背景とした賃上げやサービス価格の上昇も見られ、需要型インフレの兆しもないわけではありませんが、まだまだですよね…

インフレと日銀の利上げ

物価上昇が続くと、日銀は政策金利を引き上げ、インフレを抑えようとします。

金利が上昇すると、企業や家計はお金を借りにくくなります。設備投資や住宅購入、消費などが抑えられるため、需要が強すぎることによって起きる需要型インフレには、利上げによる効果が期待できます。

そうなんですよ、皆さんはどう思いますか?

前述の通り、今の日本のインフレ状況は、原油や天然ガスなどのエネルギー価格の上昇、円安による輸入価格の上昇等、その主な原因を踏まえると、需要型よりも供給型インフレの影響が強いと考えられます。

このような状況では日銀が利上げをしても、原材料の価格を直接下げたり、商品の供給不足を直接解消したりすることはできませんよね?

むしろ、金利を上げすぎれば、すでにコスト増に苦しんでいる企業の借入負担が増え、個人消費も弱くなる危険性があるのです。

それでは、利上げの効果は全くないのか?
というと、そうではなく、利上げによって日米金利差が縮小し、円高方向に動けば、原油や原材料などの輸入価格を抑える効果が期待できます。そのため、利上げは円相場を通じて供給型インフレを和らげる面もあるのです。

(利上げと為替の関係性については「為替相場はなぜ動く?株価や長期金利との関係は?」で解説しています)

また、景気抑制につながる危険性もありますが、利上げにより借入コスト(住宅ローンや設備投資資金の調達コスト)を高め、消費行動や設備投資を抑えることで、物価上昇を落ち着かせることにつながります。

日銀は2026年7月の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度に据え置きましたが、賃金や物価の上昇が続けば、追加利上げが意識されることになります。
ただ、現在のような供給型インフレに対して急いで利上げを進めると、物価を十分に抑えられないまま景気だけを冷やすことにもなりかねません。

日銀には、物価や賃金だけでなく、個人消費や企業業績、為替の動きも見ながら、インフレを抑えつつ景気を悪化させない慎重な金融政策運営が求められているのです。

かなり難しいところですよね…

インフレと利上げと株価の関係

物価とともに企業の売上や利益も増えるインフレであれば、株価にとって追い風になる可能性があります。
企業が値上げしても販売数量を維持できれば、売上高や利益を伸ばせるからです。

一方、原材料費や人件費の上昇分を販売価格へ転嫁できない企業では、利益が圧迫されます。

さらに、インフレを抑えるために金利が上昇すると、次のような影響が考えられます。

  • 企業の借入負担が増える
  • 設備投資や住宅購入が減りやすくなる
  • 預金や債券の魅力が高まり、株式の相対的な魅力が低下する
  • 将来の成長期待で買われている株の割高感が意識される

インフレだから株価が上がる、あるいは下がると、一方向に考えることはできないのです。

インフレ時に注目したい企業

インフレ局面では、単に「インフレに強い業種」を探すより、企業ごとの価格転嫁力を見る必要があります。

確認したいのは、次のような点です。

  • 値上げ後も販売数量を維持できているか
  • 売上高の伸びがコストの増加を上回っているか
  • 営業利益率が低下していないか
  • 海外売上高や輸入コストはどのくらいあるか
  • 借入金が多く、金利上昇の影響を受けやすくないか

ブランド力があり、値上げしても顧客が離れにくい企業は、インフレを利益の増加につなげやすくなります。

反対に、価格競争が激しく、コストの増加を自社で負担しなければならない企業は、売上高が増えても利益が減ることがあります。

決算を見るときも、売上高の増加だけではなく、営業利益率や会社側の価格転嫁に関する説明まで確認したいところですね。

まとめ

現在の日本の物価上昇は、需要の拡大によるものというより、円安や原材料費、人件費などのコスト上昇による供給型インフレの影響が強いと考えられます。

供給型インフレでは、企業が増加したコストを販売価格へ転嫁できなければ、売上高が増えても利益が圧迫されます。また、日銀が利上げを進めれば、円高によって輸入価格を抑える効果が期待できる一方、企業の借入負担が増え、景気や株価の重荷になる可能性もあります。

株式投資では、インフレだから特定の業種が買われると単純に考えるのではなく、値上げ後も販売数量を維持できているか、増加したコストを価格へ転嫁できているか、利益率が低下していないかを企業ごとに確認する必要があります。

今後は物価や日銀の利上げだけでなく、円相場の動きと、それぞれの企業がインフレにどのように対応しているかを見ていきたいと思います。

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